コラム

山の上で朝のコーヒーを飲みながら、忘れかけていた自分の好きを思い出す

友人が、「15分くらいで登れる山があるから、行ってみない?」と言うので、

「それなら朝早めに出かけて、山の上でコーヒーを飲もう!」と先日出かけた。

 

真っ青な空、予想気温は30度を超える。
1時間ほど走らせた車を駐車場に停め、登山口までのゆるい坂を歩き出した。

木陰はひんやりとして、なかなか気持ちのいいお散歩気分だ。

 

しかし、思ったより登り口までが遠い。15分以上歩いて、やっと山登りがスタート。
高さはない山なのだけど、かなりの急こう配を上がっていく。

最初のうちは木におおわれていたけれど、そのうち岩場だけになった。

運動不足の体に、容赦なく照りつける陽射し。

 

脚は不思議なことに全然平気なのだけど、流れ落ちる汗がすごい。
足を止めて拭いても、背中を流れる汗が止まらない。

体を動かしてこんなに汗をかくのは、どれくらいぶりだろう?
すっかり遠ざかっていた感覚だ。

 

この山は、海に突き出した位置にある。
突然視界が開けて、左右に海が見え始めた。

眼下に静かな凪の海を眺めながら、ハードな段差を登っていく。

 

やっと着いた!
と思ったが、そこは頂上の一歩手前。ひと休みして水分を補給する。

夏休みの最後の週末だからだろうか、子ども連れのファミリーが何組も行き交う。
どの家族も子どもたちの歩みの軽さと、母親のくたびれ感が対照的で面白い。

 

一段と険しくなった最後の200mばかりを上がる。
着いた!頂上だ!

 

15分にプラス1時間くらいはかかったけど、持って行ったコーヒーとパンで山頂の朝食。
気分最高だ。

視界に入るのは、低い木々の向こうに広がる静かな海と夏の空だけ。
贅沢なひととき。

 

しばらく山頂で過ごし、登りと反対側の、さらに急こう配の道を降りることにした。
時々滑りそうになりながら、ずんずん下る。

 

下りきったところはビーチ。そのまま海に飛び込みたい気分だ。
水着と着替えを用意してこなかったことを悔やみながら、足だけ海につかる。

 

あー、なんて気持ちいいんだろう。

ささっと登って朝のコーヒーを飲むだけのつもりが、目いっぱい体を動かし、山も海も楽しめた。

 

私はこんな時間を、もっとたくさん過ごしたいんじゃなかったっけ?
今のままでいいのかな、とふと思う。

 

体を動かすこと、自然に触れること。その心地よさを忘れちゃいけませんよ。
と、天の声が聴こえたような気がして、

誘ってくれた友人と、山と海と空と陽射しと風に、心から感謝した。

 

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